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日商簿記2級

【1問1問】工業簿記が初見で意味不明だった私を救った、“カレー工場”のたとえ

材料費・労務費・経費——入口の費目分類を4問で

日商簿記2級・2級・独学者向け・約7分・更新 2026-06-10

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正直に白状する。簿記2級の勉強で初めて工業簿記のページを開いたとき、私は静かにテキストを閉じた。

3級からずっと付き合ってきた売掛金や買掛金が消え、いきなり「仕掛品」「製造間接費」「賃率差異」みたいな見知らぬ単語が並んでいる。商業簿記の続きだと思って開いたら、まるで別の検定が始まっていた。あの「聞いてないよ」という感覚は、2級に挑んだ人ならたぶん全員わかってくれると思う。

でも、いまなら断言できる。工業簿記は、入口の「費目分類」さえ腹に落ちれば、あとは型の繰り返しだ。しかも配点40点ぶんの大事な得点源。今日はその入口を、私を救った“カレー工場”のたとえと、オリジナルの4問で一緒に潰していこう。

工場で使うお金は、たった3種類しかない

工業簿記の主役は、モノを作る工場だ。そして工場で発生する原価は、突き詰めると3種類しかない。

カレー屋の工場を想像してほしい。カレーを作るのに必要なお金は——①じゃがいもや肉などの材料費、②カレーを作る人の給料である労務費、③ガス代や鍋の減価償却費みたいな、それ以外の経費。この3つで全部だ。

テキストだと「材料費・労務費・経費」と漢字が並んで身構えるけれど、要は「モノ代・ヒト代・その他」。まずこの3つの財布をイメージできれば、工業簿記の地図の半分は手に入っている。

もう1つの軸:「どのカレーのため」か言えるかどうか

3つの財布に、もう1本だけ軸を足す。それが直接費か、間接費かだ。

じゃがいもは「ビーフカレー用に使った」と、どの製品のために使ったかをはっきり言える。こういう“ひも付けできる”原価が直接費。一方、工場全体を照らす電気代は、ビーフカレーのためともチキンカレーのためとも言えない。こういう“みんなのため”の原価が間接費だ。

そして仕訳のルールは、たった1行で書ける。直接費は「仕掛品」へ、間接費は「製造間接費」へ。仕掛品(しかかりひん)は“作りかけのカレー鍋”、製造間接費は“みんなのための共益費を一度集めておく箱”。行き先はこの2つしかない。ここまで持って、問題に入ろう。

白猫

白猫:「どのカレーのため?」って聞いて、答えられたら仕掛品、答えられなかったら製造間接費。判定はこの一問だけなんだ。

【問1】材料500,000円を掛けで買った

まずは材料の購入から。材料500,000円を仕入れ、代金は掛けとした。さて、仕訳は?

買った段階では、まだ“材料の倉庫に入れただけ”。なので資産の「材料」が増える。3級でやった商品仕入の感覚とほぼ同じで、相手は買掛金だ。

(借)材料 500,000 /(貸)買掛金 500,000

ポイントは、商業簿記の「仕入」ではなく「材料」という資産で受けること。工場の倉庫に置いてある段階では、まだ原価ですらない。ただの在庫だ。

【問2】材料を使った——どのカレー用かで、行き先が分かれる

倉庫の材料を、いよいよ使う。「製品A向けに400,000円、工場共通の消耗品として60,000円の材料を消費した」。仕訳は?

さっきの軸を当てる。製品A向けの400,000円は“どの製品のためか言える”から直接材料費で、行き先は仕掛品。共通消耗品の60,000円は“みんなのため”だから間接材料費で、行き先は製造間接費。

(借)仕掛品 400,000 /(貸)材料 400,000
(借)製造間接費 60,000 /(貸)材料 60,000

材料という倉庫から、作りかけの鍋(仕掛品)と共益費の箱(製造間接費)へ、お金が引っ越したイメージだ。貸方が両方とも「材料」なのは、倉庫から出ていったから。

【問3】働いた人の給料も、同じ軸で分かれる

今度はヒト代。「直接工の賃金消費高は300,000円(すべて直接作業)、間接作業に従事した工員の賃金消費高は50,000円」。仕訳は?

考え方は問2とまったく同じだ。製品を直接作っている人の作業は“どの製品のため”が言えるので直接労務費→仕掛品。修理や運搬など間接作業のぶんは“みんなのため”なので間接労務費→製造間接費。

(借)仕掛品 300,000 /(貸)賃金 300,000
(借)製造間接費 50,000 /(貸)賃金 50,000

材料が「材料」勘定から出ていったように、ヒト代は「賃金」勘定から出ていく。出口が違うだけで、振り分けの理屈は1ミリも変わらない。

【問4】工場の機械の減価償却費80,000円

最後はその他のお金、経費だ。「工場の機械の減価償却費80,000円を計上した」。仕訳は?

機械はいろいろな製品の製造にまたがって使われるから、“どの製品のため”とは言えない。つまり間接経費で、行き先は製造間接費だ。

(借)製造間接費 80,000 /(貸)減価償却累計額 80,000

経費はほとんどが間接費になる(電気代・ガス代・工場の家賃・減価償却費…どれも“みんなのため”だ)。だから「経費はだいたい製造間接費行き」と覚えておくと、本番で迷う時間がぐっと減る。

ただし、経費にも例外が1つだけある。外注加工賃だ。「製品Aの部品の加工を外部の工場に頼んだ」なら、どの製品のための支出かはっきり言える。だからこれは直接経費として仕掛品へ行く。試験で経費の振り分けを聞かれたら、「外注加工賃だけは仕掛品、あとはだいたい製造間接費」——この覚え方で、まず外さない。

黒猫

黒猫:3つの財布(材料・労務・経費)×2つの行き先(仕掛品・製造間接費)。工業簿記の入口は、この6マスの表が書ければ勝ちだ。

私がハマった引っかけ:「直接工」なのに「間接費」になる瞬間

ここで、私が模試で見事に踏み抜いた引っかけを共有しておきたい。問3をもう一度見てほしい。じつはあそこに、本試験頻出のワナが埋まっている。

「直接工=ぜんぶ直接労務費」だと思い込んでいないだろうか。私は思い込んでいた。でも正しくは、判定するのは“人”ではなく“作業”だ。製品を直接作っている直接工でも、機械の掃除や材料の運搬みたいな間接作業をした時間のぶんは、間接労務費として製造間接費へ行く。だから問3では、同じ「賃金」が仕掛品と製造間接費に分かれて出ていった。

「カレー職人だって、鍋を洗っている時間はカレーを作っていない」。そう考えると、すっと腑に落ちる。試験では「直接工の間接作業時間」という言い回しでしれっと出てくるので、“人”ではなく“その時間に何をしていたか”に丸をつける癖をつけてほしい。私はこれで4点落とした。あなたは落とさなくていい。

この先の工業簿記は、ぜんぶ“川下り”でつながっている

最後に、この入口がこの先どこへつながるのか、地図の続きだけ見せておきたい。工業簿記には「勘定連絡図」という全体地図があって、原価は川の流れのように一方向に下っていく。

材料・賃金・経費 →(直接費は)仕掛品 →(完成したら)製品 →(売れたら)売上原価。間接費のほうは、いったん製造間接費の箱に集まってから、各製品の仕掛品へ配られて本流に合流する(これが次の論点、「配賦」だ)。

つまり、今日やった費目分類は、この川のいちばん上流の分岐点。ここで流す先を間違えると下流が全部ズレるからこそ、最初に固める価値がある。逆に言えば、ここが固まれば、第4問の仕訳問題はかなりの確率で取れる。配点40点の工業簿記が「怖い」から「おいしい」に変わる分岐点は、間違いなくここだ。

工業簿記の勘定連絡図。材料費・労務費・経費のうち直接費は仕掛品へ、間接費は製造間接費の箱に集めてから配賦で仕掛品へ合流し、完成したら製品、売れたら売上原価へ流れる
工業簿記の川の流れ。今日やった費目分類は、いちばん上流の分岐点だ。

4問を1枚の地図にまとめる

ここまでの4問、じつは全部この表に収まっている。

  • 材料費:どの製品のためか言える → 仕掛品へ(問2前半)/言えない → 製造間接費へ(問2後半)
  • 労務費:直接作業のぶん → 仕掛品へ(問3前半)/間接作業のぶん → 製造間接費へ(問3後半)
  • 経費:ほとんどが“みんなのため” → 製造間接費へ(問4)
  • そして購入時はまだ振り分けない。倉庫(材料勘定)に入れるだけ(問1)

工業簿記はこの先、製造間接費を各製品に配る「配賦」や、原価のズレを調べる「差異分析」へ進んでいく。でも、それも全部この6マスの上に乗っている話だ。入口のこの表さえ手で書ければ、あの呪文だらけに見えた工業簿記が、「型の決まった得点源」に変わりはじめる。

初見でテキストを閉じた私でも、ここから40点ぶんを安定して取れるようになった。だからあなたも大丈夫。まずはこの4問の仕訳を、何も見ずにもう一度切れるか試してみてほしい。——そう、いつもの「閉じて再現」だ。

工業簿記の入口は「モノ・ヒト・その他」×「どの製品のためか言えるか」。この6マスだけだ。

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