3級に合格して、勢いそのままに2級の教材を開いた人がまず戸惑うのは、見たことのない勘定科目の多さではないだろうか。「売買目的有価証券」「のれん」「200%定率法」――3級では一度も出てこなかった言葉が、当たり前のように仕訳の中に並んでいる。実はここに2級の本質がある。2級は3級の延長ではなく、3級では扱わなかった「会社をグループで見る視点」と「製造業の内部を見る視点」が丸ごと追加される試験なのだ。当サイトに収録している日商簿記2級336問を出題区分ごとに分析し、3級との違いを軸に頻出論点を整理してみたい。
当サイト収録336問の出題区分の内訳
まず全体の地図を描いておこう。当サイトの簿記2級336問は、本試験の出題構成にあわせて5つの区分で出題を揃えている。区分ごとの問題数は次のとおりだ。
- 第1問 仕訳:126問
- 第2問 個別論点:58問
- 第3問 決算・財務諸表:45問
- 第4問 工業簿記:69問
- 第5問 原価計算:38問
商業簿記にあたる第1問〜第3問の合計は229問、工業簿記にあたる第4問・第5問の合計は107問。問題数だけ見ると商業簿記が圧倒的に多いが、これは商業簿記が論点の幅広さゆえに問題を量産しやすいからで、工業簿記を軽視してよいという意味では決してない。むしろ計算のパターンが絞られている工業簿記は、得点源にしやすい区分だと言える。
3級にはなかった論点が、商業簿記の主役になる
商業簿記の中で最も問題数が多いのは第1問の仕訳126問だ。仕訳はすべての論点の土台であり、ここを固めることが合格への最短ルートになる。そして、その土台部分こそ3級からの変化が最も大きい場所でもある。当サイトの仕訳・個別論点・決算の各区分で繰り返し出題されるのは、次のようなテーマだ。
有価証券・連結・税効果まわり
- 有価証券の保有目的別処理(売買目的・満期保有目的・子会社/関連会社・その他有価証券で評価方法が変わる論点)
- 連結会計(資本連結や成果連結の考え方)
- 税効果会計(会計上と税務上の一時差異を調整する処理)
- 退職給付引当金
このあたりが3級との境界線そのものだ。3級では「有価証券」という勘定科目すら登場しなかった人も多いだろう。2級になると、同じ「株式や債券を買う」という取引でも、保有目的によって処理がまったく異なる、という新しい視点が要求される。とくに有価証券は、たった「保有目的」という一語の違いで処理が分かれるため、目的別に整理して覚えることが重要になる。
その他の重要論点
- のれん償却(のれんの計上とその後の償却処理)
- 200%定率法による減価償却
第3問の決算・財務諸表(45問)では、これらの個別論点が決算整理事項として総合的に問われる。一つひとつの仕訳が正確であることが、最終的に貸借対照表・損益計算書を完成させる前提になる。
有価証券の仕訳を、実際の問題で見てみる
言葉で説明されてもピンとこないという人のために、当サイトに収録している実際の問題を2問、そのまま見てみよう。どちらも第1問の仕訳問題で、テーマは「売買目的有価証券の購入」である。
1問目はこうだ。「売買目的で額面総額1,000,000円の社債を、額面100につき98円で購入し、購入手数料5,000円とともに現金で支払った。」
3級であれば、買った金額をそのまま記録すればよいケースがほとんどだった。だが2級の有価証券では、購入手数料という付随費用を取得原価に含める、というルールが効いてくる。計算してみると、社債本体の価格は1,000,000円×98/100で980,000円。これに購入手数料5,000円を足すと985,000円になる。仕訳は次のとおりだ。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 985,000円 | 現金 | 985,000円 |
購入手数料を「支払手数料」として別の費用科目に分けてしまう誤りが起きやすいポイントだが、有価証券の取得にかかる付随費用は資産の取得原価に算入する、というのが正しい処理になる。
2問目も同じ考え方を確認できる問題だ。「売買目的でA社株式100株を1株600円で購入し、購入手数料2,000円を含めて現金で支払った。」こちらは株式100株×600円で本体価格60,000円、これに購入手数料2,000円を足して62,000円が取得原価になる。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 62,000円 | 現金 | 62,000円 |
2問に共通しているのは、購入手数料という付随費用を取得原価に含める、というただ一点だ。社債でも株式でも考え方は変わらない。逆に言えば、この原則さえ押さえておけば、額面と単価のどちらの形式で出題されても慌てずに計算できる。
工業簿記の頻出テーマ
第4問69問・第5問38問、合計107問を占める工業簿記は、商業簿記に比べて出題パターンが安定している分野だ。当サイトで繰り返し出題している論点は次のとおりである。
- 標準原価計算の差異分析(材料費・労務費・製造間接費の差異を分解する)
- 直接原価計算とCVP分析(損益分岐点や目標利益の計算)
- 部門別計算(製造間接費を部門ごとに配賦する)
いずれも計算の手順がある程度決まっているため、一度パターンを理解すれば応用が利きやすい。差異分析やCVP分析は図を描いて整理すると理解が安定する論点でもある。
配点・問題数を踏まえた学習順序
本試験は商業簿記・工業簿記の両方から出題されるため、片方だけでは合格点に届かない。問題数の多さと習熟のしやすさを踏まえると、次のような順序が現実的だ。
- 1. 第1問の仕訳を最優先で固める。収録126問と最も多く、すべての論点の基礎になる。
- 2. 工業簿記(第4問・第5問)に早めに着手する。パターンが安定しており、得点源にしやすい。
- 3. 個別論点(第2問)で連結・税効果・有価証券などを深める。
- 4. 第3問の決算・財務諸表で総仕上げに仕上げる。個別論点を組み合わせて使えることが前提になる。
仕訳と工業簿記が安定すると、後半の総合問題に余裕を持って取り組めるようになる。
まとめ――3級との違いを意識する
2級で新しく登場する論点を一言でまとめるなら、「会社をグループで見る視点」と「製造業の内部を見る視点」が加わる、ということに尽きる。有価証券は保有目的の判断が先に立ち、評価方法もそれによって変わる。退職給付や税効果は、会計と税務のズレを調整するという3級にはなかった発想が必要になる。標準原価計算は差異の有利・不利の方向を間違えやすい。連結会計は個別財務諸表と連結財務諸表の違いを整理しておかないと混乱しやすい。
どれも「単なる暗記」ではなく「その処理になる理由」を理解しているかどうかが分かれ目になる論点だ。なぜその仕訳になるのかを自分の言葉で説明できるようになることが、応用問題への対応力につながっていく。
当サイトで演習する
当サイトでは、ここで紹介した第1問〜第5問の各区分について、合計336問の演習問題を用意している。有価証券の仕訳から工業簿記の差異分析まで、頻出論点を区分ごとに繰り返し解くことで、本試験の出題傾向に応じた実践的な力が身につく。3級との違いを意識しながら、仕訳と工業簿記から取り組んでみてほしい。