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日商簿記2級

【1問1問】工業簿記「配賦」は、要するに“共益費の割り勘”。予定配賦と差異まで4問で

「みんなのための箱」を、どう配るか——費目分類の続き

日商簿記2級・2級・独学者向け・約5分・更新 2026-06-10

日商簿記2級の記事

前回の『費目分類』の記事で、工場のお金は2つの行き先に分かれる、という話をした。どの製品のためか言えるお金は仕掛品へ。言えない“みんなのため”のお金は、製造間接費という箱へ。

で、当然こうなる。「……その箱、最後はどうするの?」

箱に集めた電気代も機械の減価償却費も、もとはと言えば製品を作るためのお金だ。だから最終的には、各製品に配り直さなければいけない。この“配り直し”が配賦(はいふ)。要するに共益費の割り勘だ。ただし、人数で割る普通の割り勘と違って、「何を基準に割るか」を自分で決めるところにクセがある。今日はそこを4問で潰す。

割り勘の基準=配賦基準。「使った度合い」で割る

ルームシェアの電気代を考えてほしい。在宅時間が月300時間の人と、ほぼ家にいない人が「人数割りで半々ね」だと、さすがに不公平だ。たくさん使った人が、たくさん払うべきだろう。

工場も同じで、製造間接費は「その製品が工場をどれだけ使ったか」に比例して配るのが筋。この“使った度合い”のものさしを配賦基準と呼ぶ。代表選手は直接作業時間(その製品に職人が何時間かけたか)や機械運転時間だ。

計算はワンパターンで、配賦率 = 製造間接費 ÷ 配賦基準の合計を出して、各製品の使用量を掛けるだけ。さっそくやってみよう。

【問1】製造間接費240,000円を、直接作業時間で配賦する

当月の製造間接費は240,000円。直接作業時間は製品Aが60時間、製品Bが40時間(合計100時間)だった。各製品への配賦額は?

まず配賦率。240,000円 ÷ 100時間 = 2,400円/時間。「工場を1時間使うごとに、共益費2,400円ね」という時間単価だ。

あとは掛け算。製品A:2,400円 × 60時間 = 144,000円製品B:2,400円 × 40時間 = 96,000円。合計144,000+96,000=240,000円で、箱はきれいに空になる。

どんなに問題が複雑になっても、配賦の計算はこの「単価を出す→使った量を掛ける」の2手だけ。携帯の従量課金と同じ仕組みだと思えば、もう怖くない。

【問2】では、仕訳にすると?

問1の配賦を仕訳にしてみよう。配るというのは、製造間接費の箱から、作りかけの鍋(仕掛品)へお金を移すことだ。

(借)仕掛品 240,000 /(貸)製造間接費 240,000

前回の記事で「間接費はいったん製造間接費へ」とやったのを覚えているだろうか。あれの続きがこれだ。集める(貸方が材料・賃金など)→配る(貸方が製造間接費)。箱は通過点であって、終着駅ではない。勘定連絡図の川が、また一歩下流に進んだことになる。

勘定連絡図。製造間接費の箱に集めた間接費を、配賦で仕掛品へ配り直す流れを示した図
箱(製造間接費)から仕掛品へ。点線の矢印が、今日の主役「配賦」だ。
白猫

白猫:費目分類で「箱に集める」、配賦で「箱から配る」。前回と今回はワンセットなんだ。2記事つづけて読むと、川の流れが1本につながるよ。

【問3】実は実務では“予定”で配る——予定配賦率

ここからが2級の本番だ。問1のように実際の金額で配る方法(実際配賦)には、困った弱点が2つある。①月末まで実際額が確定せず計算が遅い。②電気代が高い月・安い月で、同じ製品の原価がブレる。

そこで実務では、年度の初めに「今年はだいたいこれくらいだろう」という予定配賦率を決めておき、それで配ってしまう。

例題:年間の製造間接費予算は2,880,000円、年間の予定直接作業時間は1,200時間。予定配賦率は? 当月の実際直接作業時間が95時間のとき、予定配賦額は?

予定配賦率 = 2,880,000円 ÷ 1,200時間 = 2,400円/時間予定配賦額 = 2,400円 × 95時間 = 228,000円。仕訳は問2と同じ形で、金額が予定配賦額になるだけだ((借)仕掛品 228,000 /(貸)製造間接費 228,000)。

「予定で配っちゃっていいの?」という気持ち悪さは、正しい。だからこそ、次の問4がある。

【問4】予定と実際のズレ=配賦差異

問3で予定どおり228,000円を配ったあと、月末に実際の製造間接費を集計したら240,000円だった。ズレはどうする?

240,000 − 228,000 = 12,000円。実際のほうが多くかかった、つまり予定より12,000円“損”した方向のズレだ。これを不利差異(借方差異)と呼ぶ。仕訳では、製造間接費の勘定に残ったこのズレを、差異の勘定へ振り替える。

(借)製造間接費配賦差異 12,000 /(貸)製造間接費 12,000

覚え方はシンプルでいい。実際 > 予定 = 予定より多く食った = 不利(借方)。逆に実際のほうが少なければ有利差異(貸方)。「予算オーバーは不利」という生活感覚そのままだ。この差異をさらに予算差異・操業度差異に分解するのが先の論点(差異分析)だが、まずは「ズレを名前つきで取り出す」ここまでを固めれば十分戦える。

黒猫

黒猫:配賦は「単価を出す→使った量を掛ける」の2手。予定配賦なら、最後に「実際とのズレ=差異」を取り出す。手順は毎回これだけだ。

補足:配賦基準は、どう選ばれる?

問題によって、配賦基準が直接作業時間だったり機械運転時間だったりして、「で、結局どれを使えばいいの?」と不安になるかもしれない。安心してほしい。試験では、使う基準は必ず問題文が指定してくれる。自分で選ばされることはない。

ただ、選ばれる理屈を知っておくと、問題文が読みやすくなる。基準選びの考え方は「その工場の製造間接費を発生させている主な原因は何か」だ。職人の手作業が中心の工場なら、人が長く働くほど電気も設備も使うから直接作業時間。機械がガンガン動く自動化工場なら、機械が回るほど電力も保守費もかかるから機械運転時間。

つまり配賦基準は、でたらめに決まっているのではなく「いちばん公平な割り勘になるものさし」が選ばれている。ルームシェアの電気代を在宅時間で割るのと、まったく同じ発想だ。

今日の4問を、川の地図に置く

前回と今回で、工業簿記の川はこうつながった。

  • 費目分類:材料・賃金・経費を、仕掛品(直接費)と製造間接費の箱(間接費)に振り分ける(前回)
  • 配賦:箱に集めた製造間接費を、配賦基準で各製品の仕掛品へ配る(問1・問2)
  • 予定配賦:実務は予定配賦率で先に配る。計算が速く、原価がブレない(問3)
  • 配賦差異:予定と実際のズレを取り出す。実際>予定なら不利・借方(問4)

第4問・第5問の工業簿記が「型ゲー」と言われるのは、この流れが毎回変わらないからだ。数字が変わっても、川の流れは変わらない。

仕上げはいつものとおり。ページを閉じて、問1の配賦率からもう一度。「閉じて再現」できたら、配賦はあなたの得点源だ。

配賦は“共益費の割り勘”。単価を出して、使った量を掛ける。予定で配ったら、ズレを差異で取り出す。

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