宅建業法に「8種制限」という関門がある。自ら売主制限とも呼ばれて、ルールが8つ並ぶ。手付の上限、クーリング・オフ、保全措置……正面から丸暗記しにいくと、数字も名前も混ざって、きれいに崩れる。私も一度、本番の1週間前に見事に崩れて、軽く絶望した。
でも、8つを貫く背骨が1本だけある。それが見えてからは、バラバラの暗記項目が、ひとつの物語に変わった。背骨はこれだ——「プロが素人に売るときだけ、素人を守る」。
なぜ、業者が売主のときだけ厳しいのか
不動産の取引は、情報も経験もプロ(宅建業者)が圧倒的に上だ。素人の買主は、気づけば相手のペースで、自分に不利な契約を結ばされやすい。だから宅建業法は、「業者が自ら売主」かつ「買主が素人(業者でない)」のときに限って、買主を守る8つのブレーキを用意した。立場が対等じゃないから、弱いほうに手すりをつける——そういう発想だ。
ということは、逆もまた真。買主も業者(プロ同士)なら、8種制限はまるごと外れる。守るべき素人がいないからだ。さらに、業者が“媒介”(仲介)で関わるだけで自分が売主にならないなら、これも対象外。この「プロ同士なら外れる」「媒介には及ばない」の2つが、ひっかけの鉄板ネタになる。
8つを一覧で
| 制限 | 何から買主を守るか |
|---|---|
| クーリング・オフ | 事務所等以外での勢いの契約。書面で告げられて8日以内なら解除できる |
| 自己の所有に属しない物件の売買制限 | 業者がまだ持っていない物件を売る不安定さ |
| 手付の額の制限 | 過大な手付。代金の10分の2(2割)が上限 |
| 手付金等の保全措置 | 完成前などに払ったお金が、業者の倒産で消えること |
| 損害賠償額の予定等の制限 | 解約時の法外な違約金。代金の2割が上限 |
| 担保責任(契約不適合)の特約の制限 | 業者に有利すぎる免責特約 |
| 割賦販売の契約の解除等の制限 | 1回の支払い遅れでの即解除 |
| 所有権留保等の禁止 | 引渡し後も所有権を業者が握り続けること |
覚える数字は、思ったより少ない
8つもあると身構えるけれど、数字が前に出るのは主に3つだけだ。手付は代金の2割まで、損害賠償額の予定も2割まで、クーリング・オフは書面で告げられてから8日。受け取った手付は「解約手付」扱い。相手が動き出す(履行に着手する)までなら、買主は手付を放棄して、売主は倍返しして、それぞれ契約をやめられる。要は「お互い、お金で手を引ける」ということだ。「2割・2割・8日」をまず体に入れる。これだけで、ぐっとラクになる。
試験では、こう顔を出す
断トツで多いのが「買主が業者だったら?」のすり替えだ。「宅建業者間の売買でも、手付は代金の2割を超えて受け取れない」——これは誤り。プロ同士なら8種制限は働かないから、2割の縛りもかからない。背骨を握っていれば、ここは一瞬で見抜ける。
もう一つは「自ら売主」かどうか。業者が媒介で間に入っているだけの取引に8種制限は及ばない。あくまで業者が当事者(売主)になるときの話、というのを忘れずに。
「プロが素人に売るときだけ、素人を守る」。この一行を胸に問題演習へ。肢のどこが“プロ同士”や“媒介”に化けているかが見えてくる。分野の優先順位は勉強順の記事、書面まわりは35条・37条の記事で。